糖尿病

ツイミーグ®(イメグリミン塩酸塩)

独自の作用機序を有する承認された2型糖尿病の画期的な新治療薬

日本/アジア

ツイミーグ®500mg [1](一般的名称:イメグリミン塩酸塩、以下「イメグリミン」)は、2021623日に日本における2型糖尿病を適応症とする製造販売承認を取得しました。同承認により、日本はイメグリミン塩酸塩製剤を世界で初めて承認した国となりました。

日本におけるツイミーグの承認は、Poxel社と大日本住友製薬が共同で実施した第3TIMES (Trials of IMeglimin for Efficacy and Safety) プログラムを含むこれまでの複数の前臨床試験および臨床試験に基づいています。TIMESプログラムでは、1,100人以上の患者さんを対象にツイミーグの有効性と安全性を評価する3本の重要な試験が行われました。3本の試験すべてにおいて、ツイミーグは主要評価項目および目的を達成し、単独または標準治療との併用において、良好な安全性および忍容性プロファイルを示すことが確認されました。

ツイミーグは、グルコース応答性のインスリン分泌促進とインスリン抵抗性の改善という2つの作用機序を有する、これまでに存在しなかった唯一の経口投与薬であると考えています。

ミトコンドリアは細胞のいわば発電所であり、その機能障害は2型糖尿病の病態生理と関連していることが示唆されています。イメグリミンは、糖尿病の病態生理の主要な特徴であるミトコンドリアを標的とすることにより、下図に示すように、グルコースの上昇に応じて膵β細胞からのインスリン分泌を促進すると同時に、インスリン抵抗性を改善します。 


引用元: Hallakou-Bozec et al, Mechanism of action of imeglimin – a novel therapeutic agent for type 2 diabetes; Diabetes Obes Metab 2021, doi.org/10.1111/dom.14277

これらの効果により、イメグリミンは病気の進行を遅らせ、現在の治療法では効果が得られない患者さんに治療の選択肢を提供できる可能性があると考えています。また、既存の治療法を補完し、糖尿病の心腎合併症にも良い効果を与える可能性もあります。
これまでにイメグリミンは、28の臨床試験で評価され、米国、欧州および日本において400名の非糖尿病患者と1,800名の2型糖尿病患者に投与されてきました。イメグリミンは各試験で高い忍容性を示し、プラセボに比べ、ヘモグロビンA1c (HbA1c)やその他の血糖パラメーターを統計学的に有意に低下させることが認められています。

[1] 用法・用量:通常、成人にはイメグリミン塩酸塩1回1,000mgを1日2回朝、夕に経口投与する。

日本の糖尿病領域市場

Decision Resources社によると、日本の糖尿病領域市場は米国に次いで世界で二番目に大きく、20082012年の年平均成長率は18%以上であり、2023年までに20%以上に達すると予想されています。現在、日本の糖尿病人口は推定1,000万人以上であり、糖尿病領域の市場は2020年までに40億ドル以上に拡大することが見込まれています。日本の糖尿病市場には、新しい革新的な製品の迅速な市場への参入を可能にする薬価制度と医療保険制度があります。日本政府が国民健康増進のための10カ年計画の中で、糖尿病を対象疾患として特定していることもあり、この市場の拡大傾向は続くものと見込まれます。

日本で行ったイメグリミンの第Ⅲ相TIMES試験

主要な3つのTIMES試験において、イメグリミンは単剤療法またはインスリンや日本で承認されている既存薬との併用療法で、HbA1cを低下させることが示されました。

TIMESプログラムは、以下3つの第相臨床試験から構成されており、それぞれの試験で、イメグリミン1000mg12回投与しています。

TIMES 1試験

この無作為化、二重盲検、プラセボ対照、単剤投与試験は、213名の日本人2型糖尿病患者を対象とした試験で、イメグリミン 1000㎎を24週間にわたり1224週間経口投与しました。

このように、TIMES 1試験では、主要評価項目であるHbA1cのプラセボ補正後のベースラインからの変化量が-0.87%と統計学的に有意(p<0.0001)であったほか、空腹時血漿グルコースなどの主要な副次評価項目も達成しました。安全性および忍容性は、プラセボと同様に良好でした。

TIMES 2試験

TIMES 2試験は、714名の日本人2型糖尿病患者を対象とした、イメグリミンの長期安全性と有効性を評価する52週間、非盲検、並行群間比較試験でした。この試験においては、イメグリミン1,000 mg12回、単剤または既存の血糖降下薬の併用下で経口投与しました。イメグリミンは下の図に示したとおり、既存の血糖降下薬にイメグリミンを併用した場合、HbA1cはベースラインから0.920.56%減少しました。

イメグリミンは、特に2型糖尿病日本人患者の80%に処方(2016年度IQVIAデータ、2016年度 NDBデータ)され、日本で最も使用されているDPP-4阻害剤と併用した場合に高い有効性が認められています。

TIMES 3試験

この二重盲検プラセボ対照無作為化試験の最初の16週間は、血糖コントロールが不十分であった日本人患者215人を対象として、インスリン併用下でイメグリミンを投与した患者群と、インスリンとプラセボを投与した患者群を比較しました。
本試験では、イメグリミンの全体的な忍容性はプラセボと同程度でした。また、治験実施計画書の規定に基づくイメグリミン投与群の低血糖発現率は、固定用量のインスリンを投与されたプラセボ群と同程度でした 。重篤な低血糖発現例は認められず、報告された大多数の低血糖の事象は中等度でした。

TIMES3試験における36週間投与の非盲検治療期間では、TIMES 3試験の最初の16週間部分を完了した208名の患者を対象として、インスリンとイメグリミンの併用投与を行いました。以下の図で示されているように、非盲検治療期間において、HbA1cのベースラインからの減少率(平均値)は、イメグリミンを52週間投与された患者(16週間試験および36週間長期投与試験の両方においてイメグリミン+インスリンを投与)では0.64%、イメグリミン+インスリンを後半の36週間のみ投与された患者(16週間試験でプラセボ+インスリン投与、36週間長期投与試験でイメグリミン+インスリン併用療法投与)では0.54%でした。

中国の糖尿病領域市場

IQVIA社によると、2017年時点で中国における2型糖尿病患者の人口は約11200万人であり、毎年1.7%増加してゆくと予測されています。中国市場における2型糖尿病治療薬の売上げは、2017年時点で約30億ドルであり、そのうちの50%を経口薬が占めています。中国でイメグリミンが承認されれば、同剤の大きな市場となることが見込まれます。

Poxel社は、中国において、現在欧米の治療薬を使用している約2,900万人の糖尿病患者のみならず、慢性腎臓病(CKD)を併発している多くの患者さんに対しても、イメグリミンは貢献できる可能性があると考えています。中国の非伝染性疾患の治療と予防に関する国家政策のもと、より多くの2型糖尿病患者が早くこの治療薬にアクセスできるようになることを期待しています。パートナーである大日本住友製薬が権利を有する中国およびその他の東アジア・東南アジア各地域において、イメグリミンの開発戦略および日本や他国で得られたデータの活用についても各国の規制当局と議論する予定です。

米国・欧州

米国、ヨーロッパ、その他大日本住友製薬との提携対象としていない国については、Poxel社がイメグリミンの権利を2021年第1四半期に再取得し、イメグリミンをこれらの国々で推進するさまざまな方策を検討しています。以前のパートナーであったRoivant社の子会社であるMetavant社がイメグリミンについて米国食品医薬品局(FDA)と協議を重ね、ステージ分類3b/4の慢性腎臓病(CKD)を伴う2型糖尿病患者対象の第相臨床試験へのイメグリミンの開発の道筋を切り開きました。薬物動態試験(PK)および薬力学試験(PD)の結果、イメグリミンは、この患者集団に対し高い忍容性を示すとともに、これまでの試験と同様に良好な安全性プロファイルを示したことから、この患者集団に対する効果的な治療薬となりうる可能性が示唆されました。

米国疾病予防管理センターによると、米国では約240万人の成人が2型糖尿病でCKDステージ分類 3b/4の慢性腎臓病に罹患しており、これらの患者は心血管性リスクが高く、難しい血糖管理を必要としています。 Poxel社は、2型糖尿病と共に進行した慢性腎臓病を罹患している患者には、優れた有効性と低血糖リスクを大きく低減した安全性プロファイルを有する新しい治療薬が必要だと考えています。

2型糖尿病はまた、CKDの主な原因の一つになっています。CKDを伴う2型糖尿病の治療はより複雑であり、治療薬の選択肢も限られています。ほとんどの血糖降下薬は、軽度のCKDを伴う2型糖尿病患者に使用できますが、CKDステージ分類 3b/4の場合、多くの治療薬は推奨されていないか禁忌とされています。さらに進行した腎機能障害の場合は、用量の調整を必要としています。これらの制限には、以下のものが含まれます。(1)腎機能障害の重症度が増すにつれ、安全性リスクが高まる。(2CKDが進行するにつれ、有効性(血糖管理)が減少する。(3)腎機能障害の重症度が増すにつれ、用量を調節する必要が生じる。

これら既存薬の制限により、CKDステージ分類 3b/4の慢性腎臓病を伴う2型糖尿病患者は、疾患を管理するための治療法に限界があるという状況に直面しています。非臨床試験と臨床試験で確認されたイメグリミンの作用機序は、CKDステージ分類 3b/4を伴う患者の血糖管理に有効である可能性を示しています。