PXL770

NASH等の慢性代謝疾患の画期的な治療薬候補

PXL770は、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を直接活性化する新規の治療薬候補です。AMPKは、脂質代謝、グルコース恒常性および炎症の制御にかかわる複数の代謝経路の主要調整因子です。本剤は、この代謝における中心的役割を担うAMPKを標的にすることで、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)のような肝臓に影響する疾患を含む慢性代謝疾患を治療することができるように、幅広い適応症を検討する機会が与えられると考えています。

AMPK酵素の直接的な活性化は、肝臓で発生する主な病態生理学的プロセスおよびNASHを引き起こす肝細胞の脂肪変性、炎症、風船様変性および肝線維化に対する利点をもたらすことにより、NASHの根本的な原因を治療できる可能性を有しています。

PXL770は、主要な細胞エネルギー調整因子を直接標的とするため、Poxel社は本剤がNASHの治療薬として有望な位置づけにあると考えています。本剤の臨床的有用性を示唆する複数の動物モデルを使用した非臨床試験結果と公表論文により、Poxel社はAMPKの活性化は肝臓損傷とNASHにつながる代謝・炎症経路おいて有益な役割を担う可能性を有すると考えています。これまでに行われた臨床試験および非臨床試験から、PXL770については以下のことが示唆されています:

  • インスリン感受性の改善
  • 脂肪肝の2つの主要原因である肝臓脂肪合成と脂肪分解の阻害 
  • 肝・脂肪組織の炎症抑制
  • 肝繊維症につながる複数の繊維形成経路の抑制
  • 心血管リスク因子の減少

非臨床試験結果

NASH動物モデルにおけるAMPK活性化の有効性は、複数の非臨床試験結果により示されています。以下は主要な非臨床試験結果の概要です。

臨床開発

Poxel社は20187月に、PXL770に関する反復投与漸増期間および薬物相互作用期間の2つで構成される第Ⅰb相試験の結果を発表しました。反復投与漸増期間では、48人の被験者を対象として、6用量群(60mgから500mg)に割り付け、それぞれの用量のPXL77011回もしくは2回、10日間投与することにより、PXL770の安全性、忍容性および薬物動態を評価しました。

当該臨床試験では、重篤な有害事象や投与中止に至る有害事象は観察されず、最大用量の500mg群においても高い忍容性が確認され、投薬の中止基準を満たす症例はありませんでした。また、各用量につき被験者の心電図(ECG)検査を行った結果、PXL770が関与したQT間隔延長(心臓安全性評価の指標のひとつ)や、その他の心電図上の指標における変化は認められませんでした。一方、PXL770の各薬物動態パラメータは投与量に比例していましたが、当該試験の最大用量では飽和傾向にあることが分かりました。

反復投与漸増期間に加え、薬物相互作用期間では、ロスバスタチンとの薬物相互作用を検討しました。有機アニオントランスポーター(OATP)の基質でもあるスタチンの一種のロスバスタチンは、他剤と併用した際に薬物動態的相互作用を引き起こすことがあり、スタチン系薬との相互作用を評価する際に一般的に使用される薬剤です。当該試験で、12人の被験者にPXL770 250mgとロスバスタチンの標準用量を11回投与した結果、PXL770OATPの基質との間に薬物動態的相互作用は確認されませんでした。

第Ⅰb相試験結果と第Ⅰa相試験の単回投与漸増試験で示された忍容性プロファイルをもとに、Poxel社は以下の図の通り、第Ⅱa相臨床試験(Proof of concept)および薬物動態・薬力学試験(PK/PD)試験を開始しました。

併用療法

Poxel社は、NASHの多様な作用機序を考えると、疾患の進行にかかわる複数の経路を標的にした併用アプローチが必要だと考えています。NASHを対象とするPoxel社の2つの主力製品である、肝細胞の代謝過負荷を軽減するためにAMPKをアロステリックに活性化するPXL770と肝臓の炎症と繊維化を防ぐミトコンドリアピルビン酸キャリア(MPC)を阻害するPXL065は、それぞれNASHの異なる経路を標的としており、承認された場合、併用療法に適していると考えています。現在、この2剤の併用療法、および2剤に加えて異なる作用機序を有し、更なる効果または相乗効果を生むと考えられるその他の治療薬をあわせた併用療法を評価する非臨床試験を行っています。

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)について

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、発症原因が不明な代謝疾患で、近年、急速に世界中で患者数が増加しています。NASHは、肝臓に脂肪が蓄積し、その結果、炎症や線維化を引き起こされることを特徴としています。長期間無症状の場合がありますが、その間も病状は進行し、重度の肝障害や肝線維化を引き起こす可能性があり、最終的には肝不全や肝臓がんに至ることもあります。NASHの主なリスク因子は、肥満、血中脂質の上昇(コレステロールや中性脂肪など)および糖尿病で、現在のところ、NASHを治癒可能とする特異的な治療方法は確立されていません。

NASH市場概況

米国の国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases)が行った分析によると、肝臓に脂肪が蓄積する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、米国で最も患者数が多い肝疾患の一つであり、世界人口の約20%、および2型糖尿病の70%近くが罹患している疾患です。

NASHはNAFLDが重症化した肝疾患で、肝硬変や肝細胞癌を進行させます。公開されている調査結果によると、NAFLD患者の約10~30%がNASHにも罹患しています。